こんにちは、養老です。本日は、インターネットやSNSで流行している「サッカー指導系の動画」について、その危険性と視聴者としての注意点を語っていきたいと思います。
急増するサッカー指導系動画とその背景
最近、TikTokやInstagram、YouTubeなどのSNSで短時間の「指導系動画」が非常に増えてきました。こうした動画の魅力は、何と言ってもその手軽さです。「数秒でテクニックがわかる」「簡単なコツでスキルが向上する」など、視聴者の興味を引く要素が満載です。特にサッカーの技術を解説する動画は、初心者や中級者からも人気が高く、投稿者も増えてきています。
サッカー指導系動画に潜む問題
ただし、こうした動画には一つ大きな問題があります。それは「実際に役立つかどうかが疑わしい情報」が非常に多いことです。特に「この技で必ず相手を抜ける」「これをやれば誰でもゴールが決まる」といったように、あたかも「万能な技術」であるかのように紹介される内容には、視聴者に誤解を与える恐れがあります。
私自身もYouTubeをやっているのでわかるのですが、動画を出し続けるためには頻繁に新しいネタを作らなくてはいけません。視聴回数や登録者数を増やしたいという意図から、どうしても過激なタイトルや誇張した内容に走ってしまう投稿者も多いのが現状です。これが、指導系動画の「質」を落としている一因とも言えるでしょう。
サッカーの本質と「指導動画」のズレ
サッカーというスポーツは、単なるテクニックだけで成り立つものではありません。フィールド上で常に変化する状況に対応し、瞬時に判断を下して動くことが求められるスポーツです。どんなに優れた技術でも、使う場面や相手の動きによって成功するかどうかが決まります。
1. サッカーの性質:シチュエーションが常に異なる
サッカーでは、同じシチュエーションが二度と来ないと言っても過言ではありません。たとえば「敵が縦を切ってくるときはこう動け」といったアドバイスがありますが、実際には「敵が縦を切る」という状況そのものが毎回微妙に異なります。
サッカーにおけるシチュエーションの違い
次のような状況を考えてみてください:
- フィールドの中央で敵が縦を警戒している
- サイドで敵が縦を切ってくる
- 味方のゴール前で敵がプレッシャーをかけている
- 敵のゴール前で敵が縦の動きを警戒している
同じ「縦を警戒されている」というシチュエーションでも、自分の位置や周囲の状況によって取るべき行動は変わります。さらに、相手の意図も毎回違うため、瞬時に対応できる「状況判断力」が必要なのです。これは一つの動画で解説できるような単純なものではありません。
2. 視聴者が持つべき意識
視聴者が指導系動画を視聴する際には、まず「一体何を得たいのか」をはっきりさせることが大切です。たとえば「ドリブル技術を知りたい」「ディフェンスのポジショニングを学びたい」など、目的を明確にすることで、どの動画が参考になるかを冷静に判断できます。
どのように指導系動画を選ぶべきか
サッカー指導動画には、「実演的なテクニック動画」と「シチュエーション別の指導動画」の2種類があると考えられます。
- テクニック動画
基本的なボールタッチやドリブルの動きなど、個人の技術を紹介する動画です。たとえば「ボールコントロール」「ターンの方法」などが含まれます。これは状況に関係なく基礎として役立つものなので、初心者には良い指導材料となります。 - シチュエーション別指導動画
相手選手の動きや味方の位置など、状況に応じた判断を教える動画です。ただし、シチュエーションを完全に説明することは難しく、視聴者の理解にも限界があるため、過信は禁物です。こうした動画を見るときは、「あくまで例であり、実際の試合では状況に応じて変える必要がある」と理解しておくことが重要です。
3. 誇張されたタイトルや内容に注意
指導系動画の中には、「100%成功するドリブル」や「足が遅くても抜ける方法」など、現実離れした内容のタイトルが多く見られます。しかし、これは誇張にすぎません。サッカーは単なる技術だけではなく、フィジカル能力や瞬時の判断力も求められる競技です。足が遅くても絶対に抜けるドリブル技など、実際には存在しません。
特に、投稿者が「プロ選手」を相手にしていない場合、フィジカル的に明らかに有利な立場で実演していることが多く見られます。たとえば、運動不足の一般人を相手にして「この技で簡単に抜けます」と見せられても、実際に試合で通用するとは限りません。プロレベルや同等の体力を持つ相手には、簡単に成功するとは限らないのです。
4. 情報の取捨選択と冷静な視点
YouTubeやSNSを使って情報収集することは便利ですが、動画を鵜呑みにしてはいけません。サッカーの技術や戦術は、実際に練習を重ねて理解を深めるものです。インターネットでの情報は参考程度にし、特に「楽にできる」「誰でもできる」といった言葉には注意が必要です。
練習と動画のバランス
動画だけに頼らず、実際の練習やチームメイト、コーチの指導を通して理解を深めることが大切です。インターネットで得られる知識はあくまでも補足であり、基本は現場での実践です。動画で学んだ技術を実際の練習や試合で試して、どのような状況で有効なのかを自分なりに検証することが上達への道となります。
まとめ:賢い視聴者になろう
サッカー指導系動画は、視聴者にとって便利で学びになる反面、過信や誤解を生む危険も伴います。視聴者は「どの情報が自分にとって有益か」を見極め、正しい姿勢で動画と向き合うことが重要です。プロのアドバイスや現場での指導も活用し、指導動画に依存せず、真の意味でのスキルアップを目指してください。
最後に、SNSを活用するのは良いことですが、正しい知識と練習を通じて自身の成長につなげましょう。視聴者一人ひとりが情報を賢く取捨選択することが、真の意味での上達に繋がります。
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